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振り向けばにらみ合う二人

2009年10月22日 23:19

さて今日はもう一つおまけで、一つ小説が出来たので後悔してみます。
あんまりうまく出来てませんが、暇つぶし程度にどうぞー。

「振り向けばにらみ合う二人」


 基本的にレクはおひとよしだ。困っている人がいると見過せない性格だ。私が目を離した隙に、また面倒事に首を突っ込んできた。しょうがないね。
 ――でもね、ティラだけでも面倒なのに、また女をパーティーに入れる事は無いだろうに。ああ、もうっ!
「本当に私のために手伝ってくださるなんて……、本当にありがとうございます!」
「礼なんていらないって」
 そういいつつ照れた様子のレク。その様子に嬉しそうな顔を見せるクブラさん。
「そうそう。困っている時はお互い様だよ。一緒に頑張ろうね」
 そんな事を考えている間に、ティラは二人の間に入って行く。ティラも私と同じ気持ちなのだろう。その積極的なところが私にとっては脅威なのだけど、少し羨ましいとも思う。
 そう思って眺めていると、さりげなくレクと手を繋ごうとしているティラ。
「私も頑張らせてもらうわ」
 レクに悪い虫を近づかせないという意味で。私もさりげなくレクとティラの間に割り込む。ちょうど横一列に並ぶ形になる。
「……邪魔しないでよ」
「そっちこそ」
 レクとクブラさんに聞こえないよう小声で私に呟く。睨んでくるので、私もにらみ返してやる。
「二人とも仲がいいわねえ」
 なんでこんな事になったんだろう。もう、いまさらだけどさ。


 私の名前はリット・ステンシル。ヒーラーをしている、一応だけど。白い帽子と白のローブが私のお気に入りだ。汚れがつかないように手入れは欠かさない。くるりとクセの着いた栗毛、燃えるような赤い瞳。これが私のチャームポイント。
 私の相方のレク・シーボルト。剣士をやっていて、とても頼れる素敵な男性だ。幼馴染でレクの事なら何でも知っている。意外と親切なところとか、その他いろいろ。
簡単に特徴を説明。親譲りの茶色の髪。挑戦的な鋭い眼。不敵そうなその口。装備には革のアーマーやショートショードなど、動きやすさを重視した物が多い。
私達二人は冒険者だ。世界中を旅して様々な冒険をする。それがレクの夢だった。そんな彼について行くために私も冒険者になったのだった。
 今はまだレクも私も駆け出しで、近場の依頼を引き受けては成功したり、失敗したりの繰り返し。少しずつ、冒険者への道を進んでいるところだった。
 現在の拠点でもある宿「シュロウ亭」その一階で休憩しているところにあの子がやってくる。
 ティラ・アーシン。それがその子の名前だ。魔法使いをしており、それっぽい黒い革のコートを羽織っている。短めに整えられた金の髪、その上に黒の帽子が乗っかっている。ぱっと見では男の子と間違えそうだ。
 だいぶ前のクエストで一緒になってからは、一緒に行動することも増えてきた。すでに私達の仲間と言ってもいい。認めたくはないが。彼女はレクが好き。私もレクが好き。お互いに譲れず、喧嘩する事もある。
――だから、私達は仲が悪い。
 カランと入口の扉に掛けられた鐘をならし、辺りを見回してから嫌そうな顔をしながらこちらにやってくる。
「……レク、いる?」
「いない」
 不機嫌そうな顔のしわがさらに深くなる。
「そう。じゃあ用は無いや。さよなら」
 素っ気ないなあ。
 ティラが扉に手をかけようとした時だった。扉が外側から開かれる。
「ただいまー、ティラも来てたんだな。こんにちは」
 レクが帰ってきた。不意打ち。ティラの顔が赤くなる。
「こここ、こんにちは」
 ニワトリみたいに呂律の回らない彼女。その横を通り過ぎて私のいる机にやってくる。ティラはまだその場につっ立っている。
「リット。新しいクエストを見つけてきたぜ」
 レクは私の向かい側に座り、クエストロールを机に広げる。私が覗き込むと、所々に分かりやすくメモが加えられた、丁寧に書き込まれた地図が映り込む。これを書いた人はきっと几帳面なのだろう。それに可愛らしい文字なのでたぶん女性なのだろう。
「これは?」
 地図の横に書かれたクエストの内容を確認しながら、レクに訪ねる。
「あるダンジョンの地図だぜ。ま、クエスト自体はそこまで難しくはないだろ」
 依頼内容はこのダンジョンに生息する薬草の採取。魔物も生息しているようだが、薬草の採取ポイントは入口からそう離れてはいない。魔物も今の私たちならさほど苦労はしないはずだ。普段のクエストよりはほんの少し背伸びした程度の難易度。うん。さすがレク、ちゃんと考えてるんだねえ。
「そうね。今の私とレクなら、これくらい簡単にこなせるわ」
「ちょっと待って」
 何、私がレクと話しているときに。いつの間にかティラが近くまで来ている。
「二人だけじゃ心配だから私も一緒に連れて行ってよ。ねえ、いいでしょう?」
 甘えるようにレクを見るティラ。
「いいぜ。ティラ、俺からも頼もう」
 最初からティラを誘うつもりだったようで、迷わず即答。ちくしょう。ティラがいれば確かに楽できるけど。でも、やっぱり嫌だー。
「やたっ! ねえ、いつ出発?」
 ティラは目を輝かせている。すごく嬉しそうだった。
「明日の朝に出発だな。よろしく頼むぜ」
 私の心の叫びも届かず、話は進んでいく。落ち込みながらも、仕方が無かったと心に言い聞かせる。
 レクがこちらに振り向いた。
「リット、頼りにしてるからな」
 ……任せておきなさい。


 ダンジョンは思っていたよりも広かった。目が慣れてくると、ある程度見えるのでカンテラを点ける必要が無い。
 パーティの先頭にはレク。その後ろに私、ティラが並んでいる。敵もそれほど強くはないし、地図に書かれた出現ポイントのメモもある。この隊列なら、どんな状況にも対応できる。そう三人で判断し、今の状況があるわけだけど、本当はレクの隣にいたいと思う。それはティラも同じの様で、お互いに不機嫌な顔になっている。
 私は地図に顔を向ける。次は右の道を行くようだ。私が地図を見ているのは、そういう役割になっているからだ。誰でもいいというわけじゃない。二人は戦闘時に即座に対応しなければならないが、私はそうでもない。だからこういったマッパーの真似をしている。
「次の道を左に行けば、採取ポイントみたい」
「なんだかあっけないねー」
 つまらなそうに、ティラが呟く。
「何事もなければそれでいい。だろ?」
 その通り。何もなければ、それにこしたことは無いわ。
 私はウンウンと頷く。ティラは「そだね」と返した。
 私は何事も無く、このクエストをこなせるだろうと思った。
 わかれ道がちょうど見えてきた。そんな時だった。
 ダンジョンに悲鳴が響いた。少なくとも、魔物の出せるような声じゃない。多分!
 私達は、周囲を警戒する。
「あっちから聞こえてくるよ!」
 ティラが指さしたのは、ちょうど分かれ道の左方向だった。
「リット、ティラ。ちょっと先に様子を見てくるぜ」
「えっ、ちょっと待――」
 私の言葉が届かない。レクは分かれ道を左に曲がり、走り去っていく。残された私達は、その後を必死に追いかける。
 私が走っていると、ティラが杖に乗って追い越して行く。
「お先に失礼!」
 飛行系の呪文を使ったのだろう。このままでは置いて行かれる。そう思った私は思わず、とっさにティラの服を掴んだ。
 勢いのついたティラを掴んだので、そのまま引っ張られる。しかし、バランスが崩れて二人は倒れこんだ。
「ちょっと何すんのこの馬鹿! 痛いじゃないの!」
 外傷はそれほどでもなく、すぐに起き上がってくる。
「そっちこそ、抜け駆けしようだなんてそうはいかないわ!」
 つい興奮して叫んでしまう。ティラも顔を真っ赤にして怒る。
「わ、私はレクに何かあったら大変だって思ったから急いだの! 邪魔しないでよ」
「嘘を付くのはいい加減にしなさいよ。図星だから、そんなに慌ててるんでしょう」
「そんなわけないもん! それに抜け駆けしようって考えてるのはリットの方じゃないの?」
「私はそんな事思っていません! ティラが先に行ったら私が一人になっちゃうでしょうが、それくらい考えなさいよ!」
 勢い余って、もう一つの本音が出てしまった。幸い、ティラは気付いていない様だ。
「それくらいすぐに追い付けばいいじゃない!」
レクと二人きりにさせるのも嫌だけど、置いていかれる事も嫌だった。
「駄目ったら駄目! とにかく、もうレクが行っちゃったじゃないの」
「そうだった!」
 ティラもようやくその事を思い出した。そんなティラの手を私は掴んだ。
「……この手は何よ」
 怪訝な顔で私を見ている。
「抜け駆け防止のためよ。ほら、追いかけましょう」
 私が手を引っ張りながら、走りだすとティラも釣られて走り出す。何か言おうとしたその口は、再び閉じられ、私とティラはレクの向かった方へと走り出した。


「おっ、二人とも遅かったな」
「あら、レクさんのお仲間ですか?」
 息を切らせてようやくレクの姿を見つけた。
 私達が駆けつけると、レクと、もう一人。綺麗な女の人がいた。二人は大きな岩の上に腰かけている。二人とも親しげな様子。もう少し離れてほしい。
「そうそう、こっちの白いのがリットで、黒い方がティラ」
 レクにそう紹介されたのでペコリと頭を下げる。ティラは「こんにちはー」と明るく挨拶していた。
 洞窟の闇さえ吸い込むような長い黒髪。その髪に顔は隠されている。それでよくこんな場所に来れるなあ。
 顔は慎ましいが、体の方は自己主張が激しく、出るとこは出ていて、引っ込むところは引っ込んでいて、まさに私の理想の体型を持っている。いいなあ。
「あなた達の事はレクさんから聞いています。私はクブラ・コーランド。近くの村で医者をやっています」
 理由は聞かなくてもわかったような気がした。そしてその予想は当たっていた。
「実はこのダンジョンに生息する薬草がもうすぐ切れそうなんです。普段は冒険者に依頼するのが普通なのですが、すぐにもこの薬草が必要な患者がいまして……、なのでこうしてダンジョンに来たのですが、いやー、レクさんが来てくれなかったらどうなっていたやら、ははは」
 近くに、私の顔よりも大きなクモの死骸が転がっている。レクが倒したのだろう。弱い部類の魔物とはいえ、クブラさんだけでは命を奪っていたかもしれない。
「俺が来た時には、かなり追いつめられていたぜ。そこで俺がズバっと叩ききってやってぜ!」
 愛用の剣を、倒した時の事を演じるように振りかざす。
「本当に助かりました。さて皆さんの目的地も同じようだそうですね」
 そうみたいだね。レクもティラも頷く。でもなんだか嫌な予感。
「せっかくなので私も一緒に連れて行ってくれませんか?」
 あー。やっぱりー。
 こうしてクブラさんがパーティに入ったのだった。


「たしか、この辺に薬草が生息しているらしいわ」
 地図によると、この部屋のどこかに薬草が生息しているらしい。部屋とは言うが、結構な広さがあり、ドラゴンだって余裕で暴れる事が出来そうだ。さすがにドラゴンはいないけど。そんな広い部屋の中のどこかにあるわけなので。探すのは大変そうだ。
 クブラさんもパーティに入り、足手まといが入ったかなと思っていたが、それ以前に魔物の気配が一向に無く、いつの間にか目的地にたどり着いていた。
 その間に、クブラさんを時折横目で見ていたが、間違いないレクを狙う眼をしていた。ニコニコした笑顔を見せながらも、その眼には熱がこもっていた。そんなわけでクブラさんにも注意がいりそうだなと思った。
 クブラさんは私達に負けず劣らず、積極的に話し掛けていた。いやそれ以上に、その会話術は人を飽きさせず、私達も聞き入ってしまっていた。気づいた時にはレクの隣にはクブラさんがいるのが当たり前のこの現状。
 ティラはというと、若干焦った様子で二人を見ている。このままでは危ない。と私とティラは同じ事を考えているようだった。
「薬草なのですが、どんな物だか知っていますか?」
 クブラさんが全員に確認するように聞いた。
「資料は読んだけど、普通の草にしか見えなかったな」
 とレク。私はその手の知識があるので、
「その薬草は、湿気や暗所を好む。特徴はツヤのある大きな葉。とはいっても知識がなければ雑草と区別がつかないわね」
「へえー」
 レクもティラも感心した様子で、私を見ている。
「よく知ってるわね。さすがヒーラーさん」
「ふふん」
 褒められると要注意人物とは言え、嬉しいものは嬉しい。
「それじゃあ、私とレクさん。リットさんとティラさんとで手分けして探しましょう」
「そうだな、もしも何かあってもその組み合わせなら何とかなるな」
 クブラさんとレクを二人きりにするのは嫌だが、納得してしまう自分がいた。しょうがないかと私はあきらめた。
「わかったわ。ティラ、行くわよ」
 ティラもそれはわかっているのだろう。ティラもクブラさんと組めば、私とレクが組む事になる。それはティラにとっては避けたいはずだ。
「うーん、仕方ないなあ」
 そう言いながらも、レクも見えない所ではすごく私を睨んでいる。私だってあなたとは組みたくないわよ。
 この現状をどうにかするべく、さっさと薬草を見つける事にする。


「リット、これ?」
「違う」
 仲の悪い二人が一緒にいるものだから、空気がまずい。さっさと見つけてレクの所に行きたい。
 会話と言う会話も無く、岩の陰やら壁を調べていく。このダンジョンには薬草と同じ環境を好む雑草もあるので、しらみつぶしで探すのに苦労している。
 ティラもガソゴソと雑草畑をかき分け、それらしき草があれば私に確認を取る。
 ほぼ無言の状況。本当に嫌だ。正直つらい。しょうがないとは言え、レクと一緒だったらこんな作業も楽しく出来るんだろうな。
 そう思い、レクとクブラさんの方を見ると――、あれ?
「ねえ、ちょっと」
 作業を中断してティラを呼び止めた。
「何よ、私は忙しいの」
 急に呼び止められて、不機嫌そうに答えるティラ。そんな事はどうでもいいの。
「おかしいの。レクとクブラさんがいないわ」
「え?」
 部屋の中は薄暗い上に無駄に広い。それでも、作業を始めて時間はさほど経っていない。見渡せば見える位置に二人はいるはずなのだ。それにもかかわらず――
「いない」
「そんなはずないって。気のせいだって……、ってちょっとどこいくの!」
 私は嫌な予感がして、足が勝手に走り始めた。
 二人がいるはずである場所を探した。岩の陰も確認したが二人とも見つからない。おかしい。そう思い、もっと部屋の奥まで進む。
 キラリと部屋の頭上で光る。目を凝らすと、部屋の奥で巨大な闇が蠢くのが見えた。その光の元は、巨大な瞳。瞳がギロリと私を睨んだ。闇が近付いてくる。その姿がはっきりと私の瞳に映る。


 私の目の前にはドラゴンがいる。それ気が付くには少し遅すぎたのかもしれない。その闇が近付いて理由がわかった。竜のウロコは、ダンジョンの闇さえ吸い込むような漆黒。それらにおおわれた岩の様なごつごつとした肌。顎に生えた牙は、どんな巨大な生物すら噛み砕けそうだ。
 ブラックドラゴン。それがその竜の正体であることを理解した。
「――ッ!」
 私は武器を構えた、背を向ければ追撃を受けてそこで終わりだ。ひとまずティラの元まで後退するべきか。
「はぁはぁ、ちょっとリット。何走り出してるのよ。慌てたじゃん。……ん? 武器を構えて何をしているの」
 良かった向こうから来てくれたみたい。呼びに行く手間が省けたわ。
「武器を構えて、上を見なさい」
「魔物? んー、どれどれ。――ッ!」
 ティラもようやくそれに気がついた。さてどうしようかしら。
 私達は武器を構えながら、ドラゴンと睨み合っていた。
 竜の顎が動く。来るか! そう思っていた私達の予想をうらぎり、口から出てきたのは、
「あら、ようやく気付きましたね。お二人さん」
 聞き覚えのある声。私とティラはその正体に気付く。
「「クブラさん!?」」
 その通り、とパチリとウィンクしてみせる。その顔でそれはちょっと。
「ふふふ、なかなか私のところには冒険者が来なくってね」
 そこからは愚痴の様なものがこぼれてくる。
「本当に誰も来なくて、暇だったんだー。だから、誰かが来るように仕掛けを考えたの」
 そこで私は気付いた。
「あのクエスト。作ったのはあんただったの」
「正解ですリットさん」
 あのクエストそのものが、クブラさんの作った仕掛けだったので、そうとも知らない冒険者をおびき寄せるために。
「あなた達の一緒にいたレクさんでしたっけ? なかなか可愛いわね」
 突然何を言い出すの。ふむ、レクを可愛いというのか。私は格好いいと思うんだけどな。
「――だからさ、この子私が貰ってもいいかな?」
 クブラさんが体を横に動かすと、奥の方でレクが倒れていた。
 時間が一瞬だけ止まった、そんな気がした。レクを貰うですって?そんな事、
「「駄目!!」」
 ティラの声と被った。同じこと考えてたのか。
「仕方ないわね。この子を譲ってくれたら見逃してあげたのに……。じゃあ、影すら残さず殺してあげる!」
 クブラの全身から殺気が膨れ上がるのを感じた。私達を本当に殺すつもりだ。クブラと私達の戦闘が始まった。


「ティラ」
「何?」
 クブラと対峙したまま、声を潜めてティラに声を掛ける。
「私達の目的は同じ、だから今だけ、今だけは協力して」
「そうだね。仕方無いな。今回だけは手を組んであげる」
 交渉成立。
 クブラの口に火が灯る。ドラゴンブレス。威力は不明だが、直撃すれば死は免れない。部屋も広いとは言え、あの巨体だ。まず逃げるのは無理。――となると。
「ティラ、あれを撃たれたらお終いよ。だから、撃たれる前に口を攻撃して!」
「わかった!」
 その言葉を聞くと、ティラは一つの魔法を発動するべく、詠唱を開始する。その紡がれる魔法は、彼女の得意分野。
「――凍結させよ」
 クブラの口からブレスが吐き出される直前。ティラの魔法が完成。発動する。
 杖の先から強烈な風と共に、触れたものを凍らせる冷気がクブラを顔面に直撃する。
「――!!」
 その冷気はクブラを顔面を凍らせる。それ自体はクブラにはそれほどダメージにはならないが、口を一瞬閉じされるには十分だ。
ブレスは口内で爆発を起こし、クブラのその鱗に包まれた体の内側を焼いた。火炎耐性があるとはいえ、ダメージは大きい。
痛みに悶えるクブラを前に、
「さすがティラ! 助かったわ」
「ふふん」
 自慢げに胸を張るティラ。
「よくもやってくれたね。……殺す、殺ス、ブッ殺シテヤル!」
 我を失ったクブラは、私たち目掛けてその巨体で突っ込んでくる!
「ティラ、クブラを注意を十分に引きつけて。今度は私が何とかするから」
「……わかった。努力する」
 同時に私はティラと離れ、二手に分かれる。あの魔法を準備する為に。
「これでも喰らえ! ――貫け氷の槍達よ」
 クブラの爪ほどある氷の槍が何十本とティラの周りに現れる。それらはクブラに尖端を向け、目標を目掛けて飛んで行く。
「アハハハ、こんなの効カナイ! アハハ、まずはお前からだァ!」
 氷の槍はクブラの強固な鱗を突き破れず、砕けて消えていく。その間にもクブラは突き進む。このままでは潰される、そう判断したティラは杖に乗った。
「――飛翔せよ!」
 間一髪、ギリギリの所を空を飛んで回避する。
勢いの着いた巨体は簡単には止まらない。片足を地面に叩きつける。もう片方の足は滑り続け、その勢いで方向転換。空中にティラの姿を見つけると、撃ち落とすべき手段として、ブレスを選ぶ。空を飛んでいる今なら魔法は使えまい。そう判断した。
 クブラが息を吸い込もうとした――その瞬間。


「これでも食らいなさい!」
 光の柱が、リットの杖から生まれる。その光にクブラは巻き込まれる。
「GAAAAAA!! ……?」
 光を浴びると、クブラの傷が見る見る内に消えていく。この光は回復魔法のようだ。
「あっはっはっは。何これ! 痛くも無いじゃないの。むしろ体が軽くなったわ、ありがとうね」
 光はまだクブラを包んでいる。光が止むまで待つつもりだ。体を癒し、万全の体調で私達に挑むつもりなのだろう。だけどそれはもう無理。すでにあなたの傷は回復してしまった。
「何してんのよリット。敵を元気にしてどうするのよ! ってそうか、あんたの回復魔法は――」
 クブラの体に異常が起きる。クブラがそれに気付くには遅すぎるくらいだった。健康な体の上から、さらに異常なまでに回復させれば、それは体を蝕む毒になる。
「痛い! 痛い! この光を止めろォォォォ!」
 クブラの体は異常なまでに活性化し、細胞が暴れる。
「瀕死でも完全回復させるから、普段は使えないんだっけ。ちょっとした傷だと、逆に回復しすぎて倒れちゃうんだよな」
「GAAAAAA!!」
 光が止まった頃。クブラはそのまま倒れ込み、目を回して気絶した。


 私達はようやくダンジョンから抜け出した。空はすでに夕日が差していた。
 クブラは残念だけど、止めは刺せなかった。逆に目覚めさせて、危ない目に合うのは想像が付く。
部屋の隅にいたレクを助け出し、力の無い私達は、二人でレクを抱え込み、どうにかこうにかここまで運んだのだった。もう疲れた。
ティラも疲れて、服が汚れるのも構わずその場に倒れ込んだ。
「あー、つかれたー」
「本当にね」
 私もその横に倒れた。その方が気持ちよさそうだったからだ。
「おつかれさま」
「ティラの方こそ、お疲れ様」
 お互いに見つめ合った。
「本当に死ぬかと思った」
「そうだね」
 本当にそう思う。下手すれば本当に死んでいた。少し震えが走る。
「本当に……、怖かったよ」
「うん」
 今頃になって、怖かった事を思い出したティラ。その目から雫が流れ落ちる。
「泣いていいよ。私も怖かったんだ……からね」
 私もなんだか泣けてきた。やっぱりあれは怖かった。
 それから二人で泣き続け、夜が訪れる頃には落ち着いた。


 カランと入口の扉に掛けられた鐘をならし、辺りを見回して親しげに手を振りながらティラが近付いてきた。
「やっほー。レクはいる?」
「んー、まだ出掛けてるわ」
「そっか、んじゃあ待たせてもらおうかな」
 あれ以来、ティラは正式に私達のパーティに加わった。すっかり私もティラもこの日常に馴染んだ。
 私はレクが好き。ティラもレクが好き。
 ――それでも私達は仲がいい。
 いつかレクが私達を選ぶ時が来るかもしれない。もしレクがティラを選んでも、私はそれを祝福したい。
 レクの隣は私かティラか。どちらになるだろう。
 先頭にはレクがいて、私とティラはその後ろ。
 今はまだこのままでいたい気がする。
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