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宮木夏美は恋をする

2009年12月17日 22:59

今月の更新分です。
もっと上手に書けるようになりたいな。
 私、宮木夏美は恋をしている。
 一目見て、私はビビっときたのだ。この人、かっこいいなって。それだけだったけど、好きになるには私には十分な理由になった。
 彼は今日から一週間の間、私の隣に住む遠藤さんの家に遊びに来ているそうだ。遠藤さんの家には今年で六十歳となるお婆さんとその二つ年上のお爺さんが住んでいる。彼はその孫といったところかな。
 彼を知ったのは、ちょうど友達との遊びから帰って来た夕方も近い頃である。
 まだ明るくてもうすぐ夕方になるのが信じられないほどに晴れ渡る空。その空の下で私は自転車を漕いでいる。
家が見えて来た時、遠藤さんの家からかっこいい男の人が出てくるのを見かける。
短く整えられた髪。目は細く、穏やかそうな雰囲気だ。身体の方は細い方だが、女性である私さえ羨ましく思えるほど健康的で理想的な体型。爽やか。そんな言葉が似合いそうな人だった。
私は目を奪われてその人を見ていたけど、勢いの付いた自転車は止まらない。自転車はシャー、という音を鳴らしながら、彼の横を通り過ぎてしまう。
慌てて急ブレーキを掛けて、急いで彼の方へと回れ右をする。
「こんにちは!」
 私は少し離れた場所から挨拶をする。彼の方は、その声に反応して後ろを向く。
「こんにちは」
 私は緊張していたが、顔には出さないように、さり気無く彼の方へと歩いて行く。
「これからお出かけですか?」
「そうだよ。ちょっとお婆ちゃんに買い物を任されちゃってね」
 彼は冗談めかせるような口ぶりでそう答える。
「ふーん。あっ、もしかしてここの家の親戚の方なんですか?」
「うん。私はここのお婆ちゃんの孫って所かな。今日から一週間くらい遊びに来てるんだ」
 なるほどなるほど。
「ところで君は?」
 彼はそこにようやく気付き質問する。
「私は隣に住んでいる宮木夏美っていいます」
「ああ、そうなんだ」
 納得したように頷く彼。
「私は遠藤あきらです。よろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします。あっそうだ。今から買い物って言ってましたね。この辺りの道ってわかります?」
 ここで話が終わってしまえば、多分もうあきらさんと会えないような気がする。その前にきっかけを作っておかないと。
「地図なら持ってるけど、ちょっと不安かな?」
 チャンス。
「じゃあ、私で良かったら案内しますよ。ついでに店の方も」
「そう? じゃあ頼んでもいいかな?」
「ええ、任せて下さい」
 私は心の中でガッツポーズをしながら、先ほどまで走ってきた道を戻って行くのだった。今度はあきらさんと二人で。


 買い物の内容を見れば、今日の遠藤さんの晩御飯がなんとなくわかるような気がする。
 キャベツ、豚肉、天かす、山芋、青海苔に卵。これらを使ってどんな料理が出来るのか。
「わかった。お好み焼きですね」
 貸してもらった買い物のメモを返しながら、私は自慢げに言葉にする。
「よくわかったね。材料見ただけで何を作るかわかっちゃうんだ。家で手伝いとかしてるの?」
「よく手伝ってるよ。いやむしろ私がご飯作る時だってある。おかげで料理は得意なんですよ」
「へえすごいね。私料理とか全然駄目でさ」
 あきらさんは感心している。
「そうなんだー。あははっ」
 思わず笑ってしまう。ちょっと失礼だったかな?
 あきらさんは私の様子を気にした風でも無く。また話を続ける。
「えっと、キャベツはどこに置いてあるかな?」
 そうだった。私達は買い物に来たのだった。危ない危ない。
「野菜売場はこっちですね」
 私はあきらさんの手を引っ張って野菜売場の方に移動する。あきらさんも私に引っ張られるままに一緒に歩いていく。


 楽しい時間ほど早く過ぎてしまうものだ。いつの間にか買物も終わって、とうとう家の方まで戻ってきてしまう。
「今日はありがとうね」
「いえ、こちらこそ楽しかったです」
 私は少し気恥ずかしい気分になる。改めてそう言われてしまうと意識してしまう。もう少し、このままでいたい。
「それじゃあそろそろ暗くなっているし、夏美ちゃんも家に戻った方がいいかな」
 そんな願いが続くはずは無かった。ここままでは終わりたくない。私は縋る思いであきらさんを呼んだ。
「あきらさん。よかったら……さ、明日一緒に遊びに行きませんか?」
 勇気を振り絞った言葉。あきらさんは少し考えて、それからこう返事する。
「いいよ。じゃあ明日ね」
 そういってあきらさんは遠藤さんの家の中へと入っていく。私はしばらくぼうっと立ち尽くしていたが、ようやく我に戻って、隣にある私の家へと帰る事にする。


「今日は楽しかったなあ」
 お風呂に響く私の声。湯気に包まれながら、今日の事を思い出す。
「やっぱり、かっこいいよかったな」
 私達は気が合うようで、買物の間ずっとしゃべってばかりだったような気がする。私も話術には自信があるけど、あきらさんだって負けてない。色んな話題で盛り上がって、とても楽しかった。また、会いたいな。
「一週間だったよね」
 あきらさんがここに滞在する期間。もう何時間かすればあと六日。それまでにあきらさんともっと仲良くなりたい。いや、それ以上の仲に。そして私とあきらさんは――。
 ぽたり。おっと鼻血が出てきた。
「明日、楽しみだな」
 少し格好が悪いけど鼻を手で押さえながら、明日へ想いを馳せる私がいる。


 ――次の日。
 夏休みってのはいいものだ。どんなに寝てても大丈夫。窓から差し込む太陽の光がまぶしいけど、まだ起きたくない。
「夏美、早く起きなさい」
 うるさいなあ。今日は夏休みだよ? もっと寝ててもいいじゃんか。
「夏美、昨日言ってたあきらさんって人が外で待ってるわよ」
 あきらが外で待っている? ――!!
「お母さん! 今何時!」
 私は飛び起きて、目の前にいるお母さんに時間を尋ねる。
「とっくにお昼の二時になってるわよ。よくこんな時間まで寝てられたわね」
 あまりの私の寝起きの悪さに、母は逆に感心した様子で私を見下ろしている。
「まだ待ってるの?」
「そうよ。早く言ってあげなさい。――ちゃんと着替えるのよ?」
 私は寝間着のまま玄関に向かおうとしている。危なかった。
「待たせるのも悪いし私が説明しておくわ。準備が出来たら、隣に行ってあげなさいよ」
「わ、わかった」
 大急ぎで私は着替える。あきらさんを待たせるわけにはいかない。もう何でもいいからおしゃれっぽく見える様な服を取り出して着替えると、今度は洗面所に向かう。
 顔を洗い、髪を梳かし、歯を磨き、身だしなみを整える。よし、これで大丈夫。
「行ってきます!」
「待ちなさい。せめてパン一つは食べときなさい。ご飯を抜くと太るわよ?」
 それは困る。小さなコッペパンを三個ほど一気に口の中に頬り込み、そこに牛乳を流し込み、あっという間に胃袋に収める。
「それじゃあ、行ってきます」
「はい、いってらっしゃい」
 あきらさんは一度家に戻ったらしい。私は隣の家へと走る。
「お待たせしましたあ!」
 バチコーンという音が出そうなくらいに、勢いよく遠藤さんの玄関扉を開く。ちょうどその玄関先にあきらさんが座っているのである。
 あきらさんは目を丸くして驚いた様子だ。すぐに落ち着きを取り戻す。
「夏美ちゃん。そんなにあわてなくてもいいんだよ?」
 そんな言葉が飛び出してきたので、私は恥ずかしくなる。顔がとても熱くて、今鏡を見たら真っ赤になっていることだろう。


 遠藤あきらさんはかっこいい。
 私が好きになった、隣にやってきた二つ年上の男の人。あと六日ほどここに滞在する予定。私はそれまでにこの人と付き合いたいと思う。
 今日は街まで出掛ける予定だった。私の家の周りには遊ぶ場所が無い、だから三十分ほど自転車で走らないといけないのだ。
 その移動中の事である。
「あきらさん、あんな所に小鳥がいますよ」
 私は道路の端に自転車を置いて、その小鳥に二人は近付く。
「ツバメの雛が巣から落ちたみたいですね。戻して上げないと」
 道路の真ん中で、ツバメの雛がよたよたと歩いている。
「それは駄目」
「え?」
 小鳥の目の前に手を差し出そうとしたけど、あきらさんの言葉に反応して手を引っ込める。
「あれは巣立ち雛。別に巣から落ちたわけじゃなくて、自分の意志で地面に降りてきてるんだよ」
「そうなんだ」
「あの雛を、巣に戻しては駄目だよ。もう一度地面に飛び降りないといけないからそのストレスで死んでしまったり、他にもいる雛を驚かせて、その雛が落ちて死んでしまうかもしれないんだって」
 あきらさん、こういう事に詳しいんだね。
「でも、こんな所にいると、自動車に轢かれそうだね」
「そうですね」
 近くで見ると雛はとても小さくてすごく可愛らしい。こんな雛が潰されるのは可哀そうだと思う。
「そうだね。巣に戻しちゃダメだけど、これくらいなら……」
 雛をちょいちょいと突きながら、道路の端っこへと誘導していく。雛は迷惑そうにしているかもしれないが、その様子はやはり可愛い。
雛を追い立てるあきらさんもなんだか優しげな顔をしている。そんな表情もするんだな。もっとほかの表情も見てみたいような気がした。
 ようやく雛を誘導し終えると、私達は自転車に戻る。
「ごめんね。それじゃあ、行こう」
「はーい」
 自転車は動き出す。雛の姿はもう見えない。


 その日は、街で服を身に行ったり、どこかの喫茶店で休憩したり、まるでデートをみたいな一日を過ごした。


 その次の日は遊べなかった。どうやらお婆ちゃん達の用事に着いて行くことになったらしい。あきらさんのいない今日は憂鬱だった。

 次の日。遠藤さんの家に行くとあきらさんは、どうやらやらないといけない課題を終わらせるんだって言って、全然遊べなかった。私は仕方がないので、家で昼寝をした。


 今日の夕方には花火大会がある。毎年、友達と一緒に見に行くけれど、今年はあきらさんと一緒に行きたい。私は遠藤さんの家のチャイムを鳴らす。
「こんにちはー」
「あらあら、いらっしゃい。あきらは今、庭の方にいるわよ」
 遠藤のお婆ちゃんはいつもの様にやってきた私を見ると、そう教えてくれる。
「そうなんですか。今行っても大丈夫ですか」
「大丈夫よお、そこでスイカを食べてるわ。せっかくだし夏美ちゃんも食べていく?」
 思いも寄らず、あきらさんに会えるだけでなく、スイカまで食べれるなんて、これで断るなんて無いでしょう。
「やたっ、もちろん食べていきます」


 庭の方に行くと、お爺さんとあきらさんが庭の見える廊下に腰を掛けて、スイカを食べている。上の方に吊るされた風鈴が涼しげに鳴っている。
「あれ? 夏美ちゃん。今日は早く来たね、珍しい事もあるんだね」
 私が昼まで寝ていることを知っているあきらさんはそういって私をからかう。それで気を悪くするような私では無く。いやこういった気安い感じで声を掛けてもらうのはなんだか嬉しい気分だ。
「はい、今日はなんだか目覚めが良かったみたいです」
昨日はたくさん寝ていたので、その分、今日は目覚めるのが早かっただけなのだけど。それから私には目的がある。あきらさんと一緒に花火大会を見に行くために。
「あきらさん、今日なんですけどね」
 勇気を出して一言。何げなく話しているように見えるが、本当は結構緊張している。
「ん? 何?」
「きょ、今日は花火大会があるんですけど、一緒に見に行きませんか?」
「そうだねー。ん、いいんじゃないかな。何時から始まるのかな?」
 やったやった。心の中ではおおはしゃぎな自分がいる。
「えーっと、夕方の八時から始まるみたいですね」
 ぱっと今日の花火大会の事を思い出す。
「それはこの近所でかな?」
「そうですね」
「それじゃあ、七時半までには準備しておけばいい?」
「はい! 今日はよろしくお願いします」
 深々とお辞儀をする。あきらさんは私を見ながらにこにこと笑っている。
「夏美ちゃんの分も用意出来たわよ」
 ちょうど話に区切りがついた所で、お婆ちゃんがスイカを持ってやってくる。
「ありがとうございます。そして、いただきまーっす!」
 スイカを受け取ると、私はさっそく大きな口を開けて頬ばる。甘くて、舌の上で溶けていくこの味が私は好きだ。
 あきらさんも新しくやってきたスイカを受け取ると、私と一緒に頬張る。
 スイカをご馳走になってから、私はあきらさんと別れる事にする。だって、今日は花火大会。せっかくだからデパートまで行って可愛い浴衣を買いに行かないと!


 夜に咲く、炎が生み出す巨大な大輪。花が咲いて、しばらくするとお腹にまで響く大きな音。
 私とあきらさんは二人で並んで花火を眺める。とても綺麗だった。
 それなのに私は花火なんてあんまり見ていない。この花火大会に賭けているのだ。あきらさんに私の想いを打ち明ける絶好のシチュエーションなんだから。この機会を逃したら、絶対に友達のままで別れてしまう。
 この花火大会の為に私は可愛い浴衣を買いに行ったし、家でも告白の練習を何度も何度も繰り返した。あとは、今この時、本番。
 ひゅるるるるる。どーん。
 最後の花火が夜空に咲く。最後の花火はこれでもかという位に巨大な花火。花火大会の最後を飾る立派なものだった。
 その花火は終わってしまった。さあ、今こそ絶好のチャンス。
「綺麗だったね」
「そうですね」
 逃げちゃ駄目だ。このままで終わっちゃう。
「あの……、あきらさん」
 勇気を振り絞れ、この一言に。
「どうしたの夏美ちゃん?」
「私、あきらさんの事が好きです」
 あきらさん。これが私の想いです。
「私も夏美ちゃんの事が好きだよ」
 あきらさんは冗談を聞いたか様に笑ってそう答える。多分、その好きは違う好きだ。
「その好きじゃありません。私は本当に、あきらさんの事が好きなんです! 付き合って下さい!」
 一緒に有るか無いかというくらいに勇気を出した気がする。それなのにあきらさんは――
「ごめん。それは無理だよ。だって――」
 その先の言葉を私は聞かなかった。余りにもショックで、その場から走り出してしまう。あきらさんから逃げてしまう。悲しくて、悲しくて、涙は全然止まらなかった。
「夏美ちゃん!」


 無我夢中で走り続け、いつの間にか家に戻っていた。目元を赤くしている母は私を心配そうにしているが、私は無視して部屋に行く。
部屋の中に入ると、布団を被る。まるで自分だけの世界がここにあるかの様だったから。
「うっ、うっ、何で、何でなのよお」
 悲しみは、留まる事を知らない。こんなに泣いた事も無い。私はずっと泣いていて、いつの間にか眠ってしまう。


 朝の日差しが眩しくて、私は目をこすりながら目覚める。
 しばらくぼーっとしていて、ようやく昨日の事を思い出す。
「あきらさんの……バカ」
 私はもう一度、布団をかぶる。今日はどこにも行きたくない気分だ。一日ゴロゴロしてたらこの気持ちは収まるのだろうか?
「夏美。起きてる? あきらさんがあなたに会いたいって玄関の所で待っているわよ」
「会いたくない。帰ってもらって」
 もうあきらさんに合わせる顔が無い。振られたし。格好悪いし。
「そう。わかったわ」
 母は諦めた様子で、下に降りて行く。ベットの横にあるカーテンで締め切られた窓。その隙間から玄関の方を覗いてみると、母は頭を下げている様子と、あきらさんが残念そうに戻って行く姿が見える。
 何か悪いことしたかな。そう思って、布団にもぐり込んだら、私はいつの間にかまた眠ってしまったのであった。


 目覚めて、時計の時間を確認する。もう夕方も近い時間だった。
 今日は十分に扱った様で、私の身体は汗でベトベトになっている。このままだと気持ちが悪い。お風呂に入ろうかな。
 パジャマは汗で身体に張り付いている。気持ちが悪いので、私はいつもの服に着替える。
 階段を降りると、母は呆れた様子で私を見ている。
「今日はまた本当に良く寝ていたわね。最高記録じゃないかしら?」
 冗談っぽく笑って声を掛ける母。私を元気づけようとしているのかな。
「そうだね。お母さん。ちょっとお風呂に入りたいんだけど――」
「ああ、そうだ。今日は断水の日らしくてね。お水が出ないのよ」
 驚愕の事実。私はがっくりと肩を下ろす。
「お風呂に入りたいなら、銭湯の方にいってらっしゃいな」
「うーん。じゃあ行ってこようかな」
 なんだか面倒くさい。そう思ったけど、身体はベトベトして気持ちが悪いし、すぐにでも汗を流したい。
 

 銭湯は自転車で十分ほどの所にある。
 銭湯があるのは知っていたけど、実際に来た事は無かったりする。今日はまだ時間が早い事もあり、人の姿も少ない。断水されているから夜になれば人が増えてくることだろう。
 人前で裸になるのは気が引ける。でも脱がないといけない。それに知っている人もいないし恥ずかしがる事なんて無いのよ。そうなのよ。
 そう思い立つと、ぱぱっと脱いで浴場への扉を開く。
 私はシャワーの所まで行くと、さっそくお湯で身体を洗う。私は洗うのは頭からってのが基本である。そこで気付いたけれども、目の前に置かれたボトルは一つしかない。それを見てみるとリンスの方だった。
「あ、ごめん。はいどうぞ」
 隣の方にいた人がシャンプーのボトルを私に渡してくれる。
「ありがとうございます。……あれ? この声」
 聞き覚えがある。だけど、こんな場所にいるはずが無い。そう思って横に顔を向けると、あきらさんがいました。信じられません。
「やほっ」
 やっぱりそこにいたのはあきらさん。
「なんで、なんで女湯にいるんですか!」
「いや、だって私さ。女だし。もしやと思ったけど夏美ちゃん。私の事、男の人と勘違いしてたんだねえ」
 納得したような顔であきらさんが私を見ている。私は突然の事態に混乱している。
「え、ええ。あきらさん。女の人だったんですか?」
「よく間違われるよー。ほら、私そこまで胸ないし。顔が男みたいにも見えるしね」
 笑ってそういってくれる。
「それじゃあ、昨日、断ったのは……」
「私はそっちの気は無いからね。気持ちは嬉しいけど」
 私は勘違いをしていたんだ。あきらさんをずっと男の人だと、本当は女の人だったんだ。
 なんで気が付かなかったんだろうと、思い返してみると、こんな一言を思い出す。
 恋は盲目。
 そうだ。私はあきらさんに夢中になりすぎて、女性である事に全然気が付かなかったのだ。あんなに近くにいたのに。
 今はとても恥ずかしくて恥ずかしくて。
 あきらさんは私にこう言ってくれた。
「まさか女の子から告白される日が来るなんて思わなかったよ」
 止めを刺された気分だ。汗を流しに来たのに、冷汗が止まらない。
 それからお腹が震えてきて、私は笑ってしまう。あきらさんも私と一緒になってわらっている。周りの人の目があったけど、全然気にならなかった。


 あきらさんがこの街にきて一週間になった。きょうがあきらさんが帰る日だ。
 女の人だって、わかって以来、最初の時よりも私達は仲良くなった。だから、私はすごく残念で仕方がない。
 私はもっとあきらさんと一緒に遊びたかった。たくさんお話をしたかった。でも今日で終わり。
「夏美ちゃん。いままでありがとうね」
「私もすごく楽しかったよ」
「それじゃあ、……またね」
「また?」
「うん。来年、いやまたお正月ごろにでも遊びに来るからさ」
 私の顔まで、あきらさんは顔を近付ける。
「そんな泣きそうな顔しないでよ」
 泣きそうな顔になっていたのかな? うん。私は今にも泣きそうだった。でも、その言葉で、また来てくれるっていってくれて安心した。
「じゃあね!」
「また――また、遊ぼうね」
 あきらさんの姿が見えなくなるまで、私はずっと手を振り続けた。
「また、会えるよね」

宮木夏美は恋してた。好きになった人は実は女の人だったんだけど。それでも楽しい、とっても楽しい夏だった。
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